平成28年10月1日より導入された株主リストの制度。商業登記規則61条に規定がありますが、実際の運用はどうなっているのでしょうか。複数の代表取締役が関与する株主総会が開催された場合の株主リストの作成義務者はどの代表取締役なのでしょうか。

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商業登記ワンポイントメモ

30 株主リストの押印義務者(平成28年11月29日執筆)


平成28年10月1日より、株主総会の決議によって登記事項を定めるケースでは、株主リストの提出が必要となりました。

根拠条文は、商業登記規則61条(後掲)です。

商業登記規則61条を読んでいっても、押印義務は規定されていません。

しかしながら、実際の法務局運用では、後記平成28年6月23日民商第99号依命通知により、会社の実印での押印義務を条文上の根拠なく課してきます。

条文上の根拠がそもそもないため、当然ながら、

1 誰が作成するのか

2 いつ付けで作成するのか→株主総会が行われたのが平成27年4月1日だったとした場合、株主リストを平成27年4月1日付けで作成すると補正になる。平成28年10月1日以降に導入された制度なので、平成28年10月1日以降の日付で株主リストを作成すべきこととなる。登記申請をする日付けで、当時の株主構成などを証明をすればよい。

3 会社が消滅するような登記手続きも存在するので、その場合は消滅会社の株主を誰が証明するのか

などなど不明瞭な点は多数あります。

印鑑証明については条文上の手当てなく要求してくることはないようなのですが、会社実印の押印義務だけは通達で要求してくるというとてもおかしな話。

執筆時点で当方として実際に手続き依頼を受けて出くわした実例をもとに、備忘録的に法務局が定める法文上の根拠のない株主リストへの押印義務についての運用について書き散らしておきます。

<ケース1>定時総会にて唯一の代表者変更をした場合
代表取締役Aが平成28年6月30日の定時総会終了をもって任期満了退任し、同日付で新代表取締役Bが総会にて代表取締役に選任された(印鑑届出はするも、印影の改印はしていない)。
なお、A代表取締役がこの定時総会の議長をし、議事録にも署名をしている。
→この場合、新代表の名前で株主リストへ会社実印を押印する。
議事録の作成をすべき者と株主リストの押印すべき者が異なっているのに要注意。
代表取締役選任事案につき、議事録には個人の実印印鑑証明添付の規定があるが、これを回避するために株主総会議事録に押印すべき会社の実印は、(旧代表)の方なのがポイント!


<ケース2>M&Aの事案。第1の株主総会にて総数引受方式による増資と、代表取締役でもある既存株主Aから新株主Bへ全株式の譲渡承認決議&株式譲渡契約の締結。
株式の全部譲渡が終了し、新オーナーたるBが第2の株主総会を開き、自らを新代表取締役に選任する。
第2の株主総会が終了後、Aは辞任する。
※代表者交代事案なので、この一連の登記をする際は、Aの印鑑は自動的に廃止となり、Bが印鑑再登録をする必要がある。

この場合、第1の株主リストに押印すべき会社実印はAのものか、Bのものか
→Bのもの

この場合、第2の株主リストに押印すべき会社実印はAのものか、Bのものか
→Bのもの

第1の株主総会はAが単独のオーナーで唯一の代表取締役であることから、証明者として最適と思われるにもかかわらずAの名前での株主リストは法務局にはじかれます。

<いちおーの考え方>
法務局が考える株主リストの作成・押印義務者は、登記申請時点での印鑑登録代表取締役ということになり(=該当の株主総会に出席している必要がない)、株主総会開催時の代表ではないもよう。会社が消滅する事案でも、存続後の代表者が証明責任を負うべきものとして法務局は取り扱う模様。
いつ時点の株主総会だから押印義務者はどの代表取締役だとかを考えないで良い分、簡単ではありますが、そもそも法文上の根拠がないのだから誰がどのように作成してもいいのではと多くの同業は思っているとかいないとか。

代表取締役交代事案では、株主総会議事録と株主リストに押印すべき会社の実印が異なる。
代表取締役交代事案では、株主総会議事録の記名人と株主リストの記名人が異なる。

商業登記規則61条

(添付書面) 第六十一条(典型的な事案に該当する箇所を読みやすくするために一部着色)

1項 本テーマに無関係につき省略
 登記すべき事項につき次の各号に掲げる者全員の同意を要する場合には、申請書に、当該各号に定める事項を証する書面を添付しなければならない。
 株主 株主全員の氏名又は名称及び住所並びに各株主が有する株式の数(種類株式発行会社にあつては、株式の種類及び種類ごとの数を含む。次項において同じ。)及び議決権の数
 種類株主 当該種類株主全員の氏名又は名称及び住所並びに当該種類株主のそれぞれが有する当該種類の株式の数及び当該種類の株式に係る議決権の数
 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合には、申請書に、総株主(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の総株主)の議決権(当該決議(会社法第三百十九条第一項 (同法第三百二十五条 において準用する場合を含む。)の規定により当該決議があつたものとみなされる場合を含む。)において行使することができるものに限る。以下この項において同じ。)の数に対するその有する議決権の数の割合が高いことにおいて上位となる株主であつて、次に掲げる人数のうちいずれか少ない人数の株主の氏名又は名称及び住所、当該株主のそれぞれが有する株式の数(種類株主総会の決議を要する場合にあつては、その種類の株式の数)及び議決権の数並びに当該株主のそれぞれが有する議決権に係る当該割合を証する書面を添付しなければならない。
 十名
 その有する議決権の数の割合を当該割合の多い順に順次加算し、その加算した割合が三分の二に達するまでの人数




<平成28年6月23日民商第99号依命通知>
第2 登記すべき事項につき株主総会又は種類株主総会の決議を要する場合等における登記の申請書に添付すべき書面について
1 登記すべき事項につき株主全員の同意等を要する場合
規則第61条第2項に規定する書面としては,代表取締役の作成に係る同項第1号又は第2号に定める事項を証明する書面であって,登記所に提出された印鑑が押印されたものがこれに該当する。

2 登記すべき事項につき株主総会等の決議を要する場合
(1) 規則第61条第3項に規定する書面に記載すべき株主又は種類株主
ア株主総会の決議を要する場合
登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合における規則第61条第3項に規定する書面には,株主総会に出席した株主に限られず,自己株式等の議決権を有しない株式の株主を除き,当該株主総会において,当該決議事項につき議決権を行使することができた株主全ての中から対象となる株主が記載されている必要がある。
イ種類株主総会の決議を要する場合
登記すべき事項につき種類株主総会の決議を要する場合における規則第61条第3項に規定する書面には,種類株主総会に出席した株主に限られず,自己株式等の議決権を有しない株式の株主を除き,当該種類株主総会において,当該決議事項につき議決権を行使することができた株主全ての中から対象となる株主が記載されている必要がある。
(2) 具体例
規則第61条第3項に規定する書面としては,代表取締役の作成に係る同項に規定する事項を証明する書面であって,登記所に提出された印鑑が押印されたものがこれに該当する。



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