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債務整理の理論

9 債務整理・闇金事件における最高裁平成20年6月10日判決について(闇金に対しては借金返済しないでよい場合がある)


貸金業法の改正により、自己資金で2000万円(段階的に引き上げられ最終的には5000万円)以上保有していないサラ金屋は、貸金業を行うことができなくなります。

そのため、今まで無数にあった自己資金の乏しい貸金業者は、2010年6月前後には、貸金業を営むことができなくなります。

この資本規制によって業務ができなくなったサラ金屋が、大量に闇金化する懸念があります。

そこで、今後利用する機会が増えるであろう、債務整理・闇金事件における最高裁平成20年6月10日判決を紹介します。

この判決は、金利が数百パーセントを超える貸付を闇金業者が行った場合は、借りた金を元本も含めて一円も返さないでよいという主旨の判決です。

まずは、最高裁平成20年6月10日判決を見てみます(一部省略。また、上告人=被害者、被上告人=闇金業者と言い換えてあります)。


1 本件は,いわゆるヤミ金融の組織に属する業者から,出資法に違反する著しく高率の利息を取り立てられて被害を受けたと主張する被害者らが,上記組織の統括者であった闇金業者に対し,不法行為に基づく損害賠償を求める事案である。

2 原審が確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 闇金業者は,著しく高利の貸付けにより多大の利益を得ることを企図して,Aの名称でヤミ金融の組織を構築し,その統括者として,自らの支配下にある各店舗の店長又は店員をしてヤミ金融業に従事させていた。
(2) 被害者らは,平成12年11月から平成15年5月までの間,それぞれ,別紙2「被害明細表」記載の各年月日に同表記載の金銭を本件各店舗から借入れとして受領し,又は本件各店舗に対し弁済として交付した。
そして,上記金銭の授受にかかわる利率は,同表の「利率」欄記載のとおり,年利数百%〜数千%であった。
(3) 本件各店舗が被害者らに貸付けとして金員を交付したのは,被害者らから元利金等の弁済の名目で違法に金員の交付を受けるための手段にすぎず,被害者らは,上記各店舗に弁済として交付した金員に相当する財産的損害を被った。

3 原審は,次のとおり判示して,闇金業者について不法行為責任を認める一方,被害者らが貸付けとして交付を受けた金員相当額について損益相殺を認め,その額を各被害者の財産的損害の額から控除した上,原判決別紙認容額一覧表の「当審認容額」欄記載のとおり,被害者らの各請求を一部認容すべきものとした。
(1) 出資法5条2項が規定する利率を著しく上回る利率による利息の契約をし,これに基づいて利息を受領し又はその支払を要求することは,それ自体が強度の違法性を帯びるものというべきところ,本件各店舗の店長又は店員が被害者らに対して行った貸付けや,元利金等の弁済の名目により上告人らから金員を受領した行為は,被害者らに対する関係において民法709条の不法行為を構成し,闇金業者は,闇金組織Aの統括者として,本件各店舗と被害者らとの間で行われた一連の貸借取引について民法715条1項の使用者責任を負う。
(2) 本件各店舗が被害者被害者らに対し貸付けとして行った金員の交付は,各貸借取引そのものが公序良俗に反する違法なものであって,法的には不法原因給付に当たるから,各店舗は,被害者らに対し,交付した金員を不当利得として返還請求することはできない。
その反射的効果として,被害者らは,交付を受けた金員を確定的に取得するものであり,その限度で利益を得たものと評価せざるを得ない。
(3) 不法行為による損害賠償制度は,損害の公平妥当な分配という観点から設けられたものであり,現実に被った損害を補てんすることを目的としていると解される(最高裁昭和63年(オ)第1749号平成5年3月24日大法廷判決・民集47巻4号3039頁参照)ことからすると,加害者の不法行為を原因として被害者が利益を得た場合には,当該利益を損益相殺として損害額から控除するのが,現実に被った損害を補てんし,損害の公平妥当な分配を図るという不法行為制度の上記目的にもかなうというべきである(この青字部分は、下記のとおり最高裁により否定されます)。

4 しかしながら,原審の上記3(3)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
民法708条は,不法原因給付,すなわち,社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為(以下「反倫理的行為」という。)に係る給付については不当利得返還請求を許さない旨を定め,これによって,反倫理的行為については,同条ただし書に定める場合を除き,法律上保護されないことを明らかにしたものと解すべきである。
したがって,反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,上記のような民法708条の趣旨に反するものとして許されないものというべきである。
なお,原判決の引用する前記大法廷判決は,不法行為の被害者の受けた利益が不法原因給付によって生じたものではない場合について判示したものであり,本件とは事案を異にする。
これを本件についてみると,前記事実関係によれば,著しく高利の貸付けという形をとって被害者らから元利金等の名目で違法に金員を取得し,多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,本件各店舗から被害者らに対して貸付けとしての金員が交付されたというのであるから,上記の金員の交付によって被害者らが得た利益は,不法原因給付によって生じたものというべきであり,同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者らの損害額から控除することは許されない。


民法では、倫理的に見て反社会的な契約は無効とされています(民法90条)。

第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

そして、反社会的な目的を持つ者が、その反社会的な契約に基づき、契約の相手方に何かしらの義務を負わせたとしても、そもそも契約自体が無効なため、相手方は一切の義務を免れます。

本来、契約が無効になった場合は、契約をする前の状態にお金や物を戻す必要があるのですが(100万円を貸した契約が無効になれば、借主は貸主に100万円だけは返す必要がある)、反社会的な契約に基づき加害者が交付した財物については、民法708条により、元の状態に戻す義務がなくなります。
第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

これらを闇金との契約にあてはめれば、犯罪に該当する超高金利の契約は無効となるため、借主(闇金被害者)の、闇金業者から借りた金を返還する義務は免除されることになります。

そのため、端的にいえば、「闇金から借りた金は、1円も返さないでよい場合がある」ということになります。



最高裁平成20年6月10日判決によると、現時点(平成21年2月21日)では、出資法という、金利の上限を定める法律にちょっとだけ違反した貸付についても、当然に借金返済義務が完全に免れるかは明らかではありません。

今回の、最高裁平成20年6月10日判決は、「出資法5条2項が規定する利率(29.2%)を著しく上回る利率による利息の契約」をした場合は、借金返済義務自体を免れると判断していますが、著しく上回っていない場合は、この法理が適用されるかは不明です。

最高裁が、あえて、「著しく上回る利率」と表記した点からすると、出資法違反の高金利貸付については、当然に借金返済義務が全部免除されるものとは判断していないようにも読めます。

いずれにせよ、今後、出資法を若干超えただけの闇金事件が激増し、それが社会問題となり、被害対策を講じなければならなくなった時に、最高裁の立場は明らかになるものと思われます。






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